減額の対象となる過失はどんな過失をいうのか

過失相殺の対象とされる「過失」というのは、交通事故を起こした加害者の過失(不法行為上の過失)と同じものだろうか?

少し、法律的な話になるが、加害者の過失責任を問えるためには、加害者に十分注意していれば事故が避ける事ができ、事故を起こせば自分がどういう責任を取らされるかを理解できる能力(不法行為責任能力)が備わってることが必要。

それに対して、被害者の過失相殺の対象となる過失責任は、被害者に事物を弁識する能力(事理弁識能力)すなわち、物事に対して良いか悪いかを判断できる能力があればよいというのが、最高裁判所の判断。

しかし、小学生になれば道路に飛び出せばどんな危険があるかを判断できるが、3~4歳の幼児には、このような能力もないのが普通。この場合には、親や幼稚園の先生の監督責任が問題となる。そこで、幼児と親、または幼稚園の先生のような監督責任を負う人たちを被害者グループとして考え、親または先生の監督義務違反の過失を、「被害者側の過失」として過失相殺をしている。

また、過失相殺で問題となるものに、信頼の原則というものがある。たとえば、青信号で交差点を走っているのに、信号を無視してバイクが交差点に入ってきて、はねてしまった場合、相手が道路交通法を守るものとして信頼して運転していれば(信頼の原則)、過失責任を問われないというものだ。