損益相殺というのはどんなことをいうのか

事故で負傷した場合、自賠責保険から支払いを受け、かつ損害賠償の請求をして損害額の全部を賠償してもらった場合、被害者は自賠責保険からの支払い分は得することになる。こうした事が無いよう損害賠償額に算定に当たっては、自賠責からの支払い分は損害賠償額から控除する。このような場合の控除を損益相殺という。

損益相殺について問題になったのは、幼児が死亡した場合の養育費の控除。幼児が生きていれば、学費や小遣いなどがかかるが、幼児が死亡すれば両親はその支出を免れる。これについては、最高裁判所が、幼児の逸失利益は幼児本人について生じたもので、養育費を免れるのは両親に生じたものであるから、損益相殺の対象にはならないと判決(昭和三九年六月二四日)した。しかしその後も、これを疑問として訴訟がなされたが、最高裁は幼児の逸失利益と養育費の利益とは性格が全く異なるもので、幼児の逸失利益の算定では、養育費を控除すべきではないという判決(昭和五三年一〇月二〇日)し、解決が図られた。